こちらでは、年齢別での診察箇所や予測される症状についてご説明させたいただきます。
Y.C.デンタルクリニック 院長 山田章貴です。
乳幼児から高校生までの時期は成長に伴い口腔環境の変化も著しいため、年齢別で観察すべきポイントが異なります。今回は乳幼児期の歯科健診の詳細についてご説明いたします。
乳幼児の歯科健診の観察ポイント
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顎顔面・顔貌・口腔機能の視診
- 骨格や顎骨の偏位、口唇閉鎖、舌の動きや位置などを診察しています。
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歯垢付着状況の視診
- 判定部位・基準により診察しています。
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乳歯の萌出状況 歯の形態・歯数の視診
- 乳歯の萌出状況を見ながら、歯の形態や歯数に異常がないか診察しています。
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う蝕・要観察歯(CO)の視診
- 各時期のう蝕好発部位を念頭において診察しています。
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歯列・咬合の視診
- 早期介入が必要な症例、専門医による定期管理が必要な症例を見逃さないよう診察しています。
- 口腔習癖による影響についても考慮しています。
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口腔軟組織の視診
- 口唇、歯肉、舌、口腔粘膜、軟口蓋などに治療や経過観察が必要な症例を見逃さないように診察しています。
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その他の異常の視診
口腔機能の発達の極端な遅れや、虐待兆候についても考慮しています。
では実際の歯科健診でよく聞く用語について解説します。
Cって何?
「C」とは歯科検診でよく使われる記号で、”caries”(カリエス、つまり虫歯)の頭文字を表します。「C」の後につくアルファベット(O)や数字(1,2,3,4)は、虫歯の進行具合を示します。
・CO(シーオー): 初期う蝕は虫歯になりかけている状態をいいます。虫歯は歯の表面についた酸によってエナメル質が溶け出すことで起こります。初期う蝕ではエナメル質の表面に微小な白い斑点や色の変化が見られますが、まだ歯の組織が傷ついていないため、通常は治療の必要はありません。
ただし、初期う蝕を放置しておくと、虫歯が進行してしまう可能性がありますが、適切なケア(歯磨きやフッ素の活用)を行うことで、もとの健康な歯に戻すことができます。
・C1(シーワン): 歯の表面にあるエナメル質に発生した虫歯の段階を指します。エナメル質内にできた虫歯は痛みやしみることがないため、気付きにくい場合があります。しかし、放置しておくと虫歯が象牙質(歯の内部組織)に達し、進行してしまう可能性があります。そのため、早期に治療することが重要です。
・C2(シーツー): 虫歯がエナメル質の下にある象牙質に進行した段階を指します。この段階では、虫歯の症状がより明確に現れます。この段階の虫歯は、早めの治療が重要です。虫歯の進行を止め、歯を健康な状態に戻すためには、歯科医の診断と治療が必要になります。
・C3(シースリー): 虫歯が象牙質の下にある歯髄(しずい)という歯の神経にまで進行した段階を指します。この段階では、虫歯の症状がさらに進行し、より強い痛みを伴うことがあります。C3段階の虫歯は、重度の状態であり、歯髄への感染や炎症が起こっている可能性が高いため、早急な歯科医の治療が必要です。
・C4(シーフォー): 虫歯が進行し、歯のほとんどを失い、根っこだけが残った状態を指します。この段階では、虫歯によって歯の組織が深刻に損傷し、復元が困難な状況になっています。そのため、早期の虫歯の発見と治療の重要性が強調されます。定期的な歯科検診や適切な口腔衛生の維持は、虫歯の予防と進行の防止に役立ちます。
歯式について
歯科健診票
健全歯(現在歯) | /or未記入 |
う蝕またはう蝕処置が認められない歯 |
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要観察歯 | CO |
主として視診にてう窩は認められないが、う蝕の初期症状(病変)を疑わしめる所見がある歯経過観察を行うことが適当と判断される歯 |
予防填塞歯 | シ |
う蝕予防のため、小窩裂溝に合成樹脂や歯科用セメントを填塞している歯 |
未処置歯 | C |
歯質に実質欠損が認められる歯。治療中の歯。処置歯にう蝕が再発している歯。 |
処置歯 | ◯ |
う蝕処置が完了している歯 |
喪失歯 | △ |
う蝕や外傷などにより抜去、脱落した歯 |
要注意乳歯 | ✖️ |
生え変わりが近づいてグラつきが起き、注意が必要な歯 |
癒合歯 | 癒合 |
2本の歯が癒合(着)している歯 |
過剰歯 | 過剰 |
先天的に過剰に萌出している歯 |
先天性欠如歯 | 先欠 |
先天的に欠如している(疑いのある)歯 |
口腔の疾病及び異常について
反対咬合(下顎前突)
下顎前突
下顎前歯が上顎前歯よりも、歯性、機能的、骨格的に前突し、正常咬合と逆になっている状態。
①上顎前歯が舌側傾斜もしくは転位している。
②臼歯部のう蝕による歯冠崩壊が著しい。
③下顎全体が近心転位している。
④上顎の発育不全がある。
①乳歯の萌出位置異常が原因になることがある。②臼歯部で咬めないなど、機能的に顎を前に出して前歯部で咬む癖がある人に多い。③遺伝的な場合がある。 ④口唇口蓋裂の人に多い。
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過蓋咬合(上顎前突)
上顎前突
○上顎の過成長、または、下顎が上顎に対して後方に移動している状態
過蓋咬合
○上顎前歯が下顎前歯に垂直的に深く咬み合っている状態。
○上顎前歯が下顎前歯の2/3以上被っている状態
○指しゃぶりや吸唇癖などの口腔習癖や、おしゃぶりの常用による。○口呼吸(鼻づまり)による。○遺伝的な場合がある。 |
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開咬
不正咬合(開咬)
○奥歯で咬んでも前歯が咬み合わずに上下の歯の間が開いている状態。
○指しゃぶり・吸唇癖・舌癖などの口腔習癖や、おしゃぶりの常用による。○口呼吸(鼻づまり)による。 |
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正中難開
不正咬合(正中離開)
○上顎中切歯の間に空隙がある状態
○正中離開は、埋伏過剰歯(正中歯)、上唇小帯の異常発達による。 |
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小帯異常
上唇小帯異常
○上唇小帯が肥大し、口唇への移行部で扇状に広がる。
○上唇小帯の付着部位が歯槽頂部にあり、切歯乳頭と連結している。
○3歳児では、明らかな機能不全が伴う場合は「異常あり」とする。(この時点で外科的処置を行うことはほとんどなく、増齢的に解消していくこともあるため、継続して経過観察を受ける。) |
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よくあるご質問
歯科健診で歯列・咬合の不正があった場合、どのように対応すれば良いですか?
学校における歯科健康診断の目的は、発育途上にある子どもの口腔の形態と機能を健全に育成し、心身ともに健康な子どもを育てることにあります。幼稚園から高等学校までの間は、乳歯列から永久歯列へと歯列・咬合が変化します。つまり、この時期の歯列・咬合の状態が常に変化しているといっても良いほどです。
しかし,歯列・咬合の不正が原因で顎関節の痛みや開口障害などの症状がある場合には,精密検査や治療をおすすめします。また矯正歯科治療に関しては,歯列・咬合の状態から将来に健康障害が心身に及ぶと予測される場合には,内容を十分に説明して適当な医療機関で精密検査を受けていただきたいと考えます。